「この支出は会議費にして大丈夫?」__と悩んでいませんか?
会議費・交際費・福利厚生費の区分は、明確な基準があるようでいて、実際の現場では”なんとなくで”処理されてしまいがち。しかし、この曖昧さこそが、税務調査で思わぬ原因になりかねません。
本記事では、これら3つの経費の違いや判断のポイントを分かりやすく整理、曖昧さをなくし、安全な経費処理への第一歩をお届けします。
♦️会議費・交際費・福利厚生費の違いと判断基準
✔️それぞれの定義と主な使い方を整理
区分 | 定義 | 主な使い方 | 注意点 |
会議費 | 業務に関する打合せ・会議に要した軽飲食費用 | 社内外の会議での飲食や軽食 | 飲食が目的になっていないか |
交際費 | 得意先や取引先との関係を円滑にするための費用 | 接待・贈答・歓送迎会 | 社内のみの飲食は基本的に対象外 |
福利厚生費 | 社員の福利・慰労のための支出 | 社内行事・ドリンク・慶弔見舞金 | 社内全員が対象であることが条件 |
✔️判断基準は”誰が”、”何の目的”で使ったか
区分の判断においては、「誰が対象か」「何の目的か」が最重要です。
たとえば同じ飲食費でも、以下のように変わってきます。
シーン | 対象 | 目的 | 区分 |
---|---|---|---|
社内ミーティング中のコーヒー代 | 社員のみ | 会議費 | 会議費 |
取引先との会食 | 社外 | 関係維持・営業 | 交際費 |
社内の懇談会 | 社員 | 福利目的・慰労 | 福利厚生費 |
金額や領収書の内容だけで判断せず、「誰のため」「何のため」を明記することが重要です。領収書には、参加者・目的・内容をメモしておくと後の説明にも役立ちます。
♦️実際によくあるグレーなケース3選
社内の昼食を”会議費”として処理してよい?
社内メンバーでの昼食を”会議費”とするケースは注意が必要です。
💡判断ポイント
・会議の実態があるのか?
・飲食が主目的ではないか?
・支出が妥当な範囲か?
☑️チェック内容
・議事録が残っていれば◎
・10,000円以下の場合計上可能(令和6年4月1日〜。それ以前は5,000円が基準)
社内の人との単なるランチ会は、福利厚生費または給与課税対象になる可能性があります。
飲食を伴う打合せは交際費?会議費?
たとえばカフェやレストランでの打合せ。これも内容によって処理が分かれます。
【例】
金額 | 会場 | 判断例 |
---|---|---|
軽飲食(500円程度) | オフィス内 | 会議費として処理 |
飲食代(1人約3,000円) | 喫茶店 | 会議費として処理できる可能性あり(会議目的であれば〇) |
飲食代(1人約11,000円) | レストラン | 交際費として処理 |
1人あたり10,000円以下かどうかで、会議費or交際費になるのかに関わるため、金額も注意が必要です。
手土産や贈答品はどこまでが交際費?
取引先へのお中元・お歳暮、手土産などは、原則として交際費です。
ただし、以下のように判断します。
金額 | 内容 | 判断のヒント |
---|---|---|
1,000円程度の手土産 | 菓子折りなど | 交際費(記録を残す) |
社員への誕生日プレゼント | 慶弔見舞金等 | 福利厚生費(全員に同条件であること) |
自社製品のサンプル | 宣伝・販売促進 | 広告宣伝費の可能性あり |
金額だけで「少額だからOK」とは判断せず、目的と対象を明確にしましょう。
♦️誤分類のリスクと税務調査での指摘例
税務調査の指摘で多い、間違った分類の仕方
税務調査では、本来は交際費にすべきところを会議費や福利厚生費にしてしまっている点がよく指摘されています。
中小企業には、交際費の特例があり、「年間800万円までの交際費を全額損金算入」または「接待飲食費の50%を損金算入」のいずれかの条件を選ぶことができます。
※年間の交際費の金額や内訳(飲食中心かどうか)で、どちらの条件を使うかを選びましょう。
引用:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm
誤分類は信頼を失い、追徴リスクを生む
「これはグレーだけど大丈夫だろう」と処理していると…
・過去数年分にさかのぼって修正
・加算税・延滞税の追徴
など、大きなリスクになります。記録の整備と区分の理解が、最善の防御策です。
♦️まとめ|区分の理解で、安心して”経理を任せられる”会社に
会議費・交際費・福利厚生費の区分は、慣れないと曖昧になりがちですが、正しく処理することで税務リスクを防ぎ、経営の信頼性も高まります。
領収書は単なる紙ではなく、企業の姿勢を示す重要な証拠。「誰が・何のために・どこで使ったか」を意識し、処理ごとに記録を残す習慣をつけましょう。
また、顧問税理士に相談することも大切です。
📚領収書や残し方・集め方の工夫も欠かせません。第三回では、実務で使える保管ルールと注意点を具体的に紹介します。