資金繰り表というと、「資金がショートし資金繰り表というと、「資金がショートしそうだから急いで資金調達する」といった”守りのツール”というイメージがあるかもしれません。
しかし、実際には資金繰り表こそが、経営のかじ取りを考えるための”攻めの武器”になります。
なぜなら、キャッシュの流れを把握すれば、自社のクセ、利益構造、意思決定のタイミングが丸見えになるからです。
本記事では、資金繰りを単なる火消しではなく、「経営判断の軸」として使う視点を紹介します。
♦️数字で”経営のクセ”をあぶり出す
資金繰り表を眺めていると、「この月はなんでこんなにお金が出ていってるんだ?」という月が出てくるはずです。
それは、”自社の経営のクセ”をあぶり出すヒントになります。
たとえば、以下のような資金繰り表の月別一覧をご覧ください。
資金繰り表(簡易版・月別推移)
※単位:万円
月 | 売上 | 支出(仕入・外注) | 支出(人件費) | 支出(販管費) | 入金差引 |
---|---|---|---|---|---|
1月 | 5,000 | 3,000 | 1,200 | 1,000 | ▲200 |
2月 | 4,800 | 2,500 | 1,200 | 900 | +200 |
3月 | 6,000 | 3,800 | 1,200 | 1,000 | ▲0 |
4月 | 4,500 | 2,200 | 1,200 | 900 | +200 |
このような表を数か月見比べるだけでも、次のような経営のクセが見えてきます。
例えば…
・売上が増える月=外注費も増える傾向→利益が伸びない
・売上の増減に関わらず人件費は一定。適正な人員配置といえるのか見直しが必要
・キャッシュが増える月は販管費が抑えられている
こうした事実に気づけると、ムダを減らすきっかけになります。
♦️資金繰りから見直す利益構造
資金繰り表からは、利益の出方とキャッシュのズレも明らかになります。
「黒字なのにお金がない」という実態は、キャッシュフロー経営の視点がないと起きがちです。
よくある利益とキャッシュのズレの原因
状況 | 表面的には… | 実際には… |
---|---|---|
売上は好調 | 利益がでている | 売掛金が多く、現金化していない |
設備投資を実施 | 固定資産が増えた | キャッシュが一気に減っている |
借入金で資金調達 | キャッシュが増えた | 返済が月々発生し、利益を圧迫する |
こうした”ズレ”に気づかずに利益だけ見ていると、経営判断を誤るリスクがあります。
だからこそ、資金繰り表を使って利益構造とキャッシュ構造の両面から自社を見直す必要があります。
♦️経営会議に資金繰り表を使う文化
資金繰り表は、経理担当者だけがこっそり見るものではありません。
むしろ、経営会議にこそ資金繰り表を持ち込むべきです。
たとえば…
・来月の入出金予定を見ながらどこに資金を回すか意思決定
・投資案件が出たとき、その月に耐えられるか即判断
・売上が計画を下回ったとき、支出や借入計画の修正を検討
数字の”見える化”ができれば、会議の質が格段にあがります。
資金繰りを共有できる文化は、現場と経営が同じ地図で動ける組織をつくります・
♦️まとめ|キャッシュの流れを把握して、次の一手を打てる会社に
資金繰りを「危機の時だけ見えるもの」と捉えていたら、経営の本質は見えてきません。
資金繰り表を日常的に活用することで、数字で経営を捉え、先回りした一手を打てるようになります。
資金繰り=戦略の道具
キャッシュの流れを味方にすれば、会社の未来はもっと読みやすくなります。